開業したい方へ

介護タクシーを開業したい方へ走蔵なりのアドバイスをさせていただきます。


 これから介護タクシーを自分で開業したいと考えている方もおられると思います。
 そんな方に、自分の経験からお伝えできることを紹介したいと思います。充分な
 情報ではないと思いますが、少しでもお役に立てれば幸いです。
 なお、このページでは開業に関する概要を紹介しますので、より詳細については
 下記のページをご覧ください。

開業までのステップ 許可申請等についての具体的なステップや申請書類
について紹介しています。
開業申請日記 私が東北運輸局に申請したときの経過を実際の日付を
追って日記風に紹介しています。
開業にかかる費用 横浜で走蔵を開業したときに実際にかかった主な経費を
紹介しています。


■それでは以下に開業に関する概要を紹介しましょう。

@ 介護タクシーを始める動機

 あなたが介護タクシーを開業したい動機は何でしょうか?

社会貢献ですか?
 これは大いに貢献できます。関われるお客様の数は限られますが
 通院などの移動に困っている方々の助けとなり、感謝していただ
 けます。

お金儲けですか?
 これは、かなり難しいです。こうした事業でお金を儲けようとする
 こと自体は、大いに結構なことだと思います。しかし、現実には
 なかなかむずかしいです。ただ、全く可能性が無いわけではあり
 ませんから、挑戦してみる価値はあると思います。

なんとなく、ですか?
 それならやめた方がいいです。開業にもいろいろ準備が必要ですし
 実はかなりリスクの高い仕事だからです。交通事故や介助時の事故
 など、お客様の命にかかわることもあります。このような「割の合
 わない仕事」は「なんとなく」ではできません。

A 開業の準備

 ここでは介護タクシーの開業にあたって必要な準備を「ひと、もの、かね」の視点から紹介します。

ひと(資格)
 介護タクシーの運転手には2種免許が必要です。現在は自動車運転
 教習所で教習を受ければ、試験場での実技試験が免除されます。
 私が二種免許を取得したときの体験をこちらで紹介しています。

 また、必須ではありませんですが、介護の資格を所持しているか、
 「ケア輸送サービス従事者研修」を修了していることが望ましいとされて
 います。

もの(設備)
 当然ながら事業用車両が必要です。必ずしも福祉車両である必要は
 ないのですが、現実には車椅子用のスロープやリフト等が無いと仕事
 になりません。福祉車両専門の中古業者がありますので、ネットなどで
 探してみるとよいでしょう。
 また、料金算定のためにはタクシーメーターが必要です。
 これは専門メーカーに直接発注することになりますが、約15万円
 くらいでしょう。
 また、事業を許可してもらうためには、事務所車庫が必要ですが
 自宅兼用でも可です。
 大きなものはそれくらいです。
 その他事務処理のための電話、パソコン、プリンタなどはプライベート
 のもので十分間に合います。
 事業者として経理処理もしなければなりませんので経理ソフトなども
 あった方がいいでしょう。

かね(資金)
 介護タクシーを開業するのに必要な資金は、上記の設備、資格がそろ
 っていればそれ以上にかかることはほとんどありません。細かく言えば
 登録免許税とか各種保険料などがありますが、それほど多額ではあり
 ません。
 ただ、開業当初から充分な仕事があることはほとんど無いので
 安定するまでの運用資金は準備した方がよいでしょう。
 また、お金そのものではないですが、さまざまな支払いや資金の調整
 などのために事業専用の銀行口座を開設した方がよいでしょう。
 個人事業者として運用するには普通口座で問題はありません。

B 開業の公的手続き

経営許可申請
 介護タクシーは運輸局が正式に認めている運輸事業ですから、当然のこと
 ながら運輸局に開業申請をして許可を請けなければなりません。そのため
 には数十枚の書類を作成する必要があります。
 「そういうの苦手だからなあ」と言う人には、申請を代行してくれる業者
 (司法書士など)もいますが、かなりの費用を要します。実際にやってみ
 ると素人でも十分にできますから、チャレンジしてみてはどうでしょうか。

 まずは、開業したいと思う地域を管轄している運輸支局に行きましょう。
 担当窓口で、開業申請に必要な書類一式を受け取ります。
 書き方が分からないところは、支局の担当に質問すれば丁寧に教えて
 くれます。
 所定の書類ができたら、運輸支局に提出します。
 申請から審査を経て許可が下りるまで、2ヶ月から3ヶ月かかります。
 その間、車両や事務所などの準備をしておきます。書類に不備があれば
 修正指示の通知が来ますので、都度対応します。

事業開始届

 経営許可が降りたら、1年以内に運輸事業を開始しなければ、許可は無効
 になります。開業した時点で「運輸開始届」を運輸支局に提出します。

税務署申請

 これは運輸事業に限らないのですが、事業を開始した時には税務署にその
 旨を届け出なければなりません。税務署に「個人事業開業届出書」という
 書式があるのでそれで届け出ます。
 同時に「青色申告承認申請」もしておくと、税務申告のときに確定申告を
 青色申請で行うことができます。


C 開業

 開業してまず悩むのが、どのようにお客さんを集めるか?ということです。
 介護業界にコネでもあればそれをきっかけにしてもいいのですが、そうでも
 なければ、最初は雲を掴むような話です。
 集客のノウハウを伝授してくれる業者や団体もありますが、当然それなり
 の費用が必要です。
 ちらしを配ったり、介護施設などに挨拶に行ったり、ホームページを立ち
 あげたり、とにかく自分で考えていろいろやってみましょう。
 そのうちに、ぼちぼちと電話が入ってくることでしょう。


D 介護タクシーの日常業務

 介護タクシーの日常業務は極めて淡々としたものです。依頼のほとんどは
 通院のための移送です。自宅に迎えに行き、病院に送る。診療が終わると
 電話が入り、迎えに行く。それの繰り返しです。
 でも、さまざまな人に出会い、喜んでもらえることをうれしく思えるならば
 毎日は楽しく充実したものになります。

 この仕事では利用者さんからの口コミ需要も多いので、一人一人のお客様を
 大切にしなければなりません。また、普通のタクシーには頼みにくい「近距離
 輸送」が多いのも特徴です。商売的に旨みは少ないのですが、こうした需要に
 応えるのも介護タクシーの大事な使命です。

 また、輸送事業者として下記のことは毎日の業務として確実にやっておく必要
 があります。
  ◇車両整備(日常点検)
  ◇経理処理(日々の入出金記録)
  ◇運行記録、点呼記録(運送事業者の義務)
 その他、顧客管理、ルート研究、新規顧客開拓なども必要でしょう。


E 最後に

 介護タクシーや有償福祉輸送を仕事にすることについては、いろいろな考え方が
 あると思います。それによって、仕事のスタイルや方針も様々でしょう。
 しかし、お客様の要望は「安全に確実に安く快適に目的地に行きたい」ということ
 に尽きます。そこをはずさなければ、何をやってもいいと思います。
 私は、介護タクシーなどという特殊な運送事業許可などあること自体がおかしい
 と思っています。本来、普通のタクシーがすべてのお客様に対応していなければなら
 ないはずだからです。ただ今はなかなか実現できないので、意思をもった人ちが
 やっているのが現状です。誰もが、自分の意思のままに自由に移動できる社会
 を早く実現して欲しいものです。